教授 槇野陽介

東京大学法医学教室のホームページをご訪問いただきありがとうございます。

東京大学法医学教室は、日本で最初に法医学講座を開設した場所とされています。初代片山国嘉先生は、法医学を「法医学とは、医学および自然科学を基礎として、法律上の問題を研究し、またこれを鑑定するところの医学科なり」と定義しています。法律とは本来、基本的人権を守り、生きている人たちが形成する社会を守るものです。法医学は死のみに向いたものではなく、生きている人が暮らす社会の安全を守るものと広く捉えることができます。

一方で、法医学の現状は厳しいものがあります。先進国間で最低レベルと言われる解剖率を上げることが課題と叫ばれながら、新しい法律ができてもなお、解剖率が上昇しません。背景には法医学者が増える受け皿がないという問題があります。また、ただ鑑定医が増えればいいという問題ではありません。解剖技官、事務員、生化学検査技官、病理組織検査技官、薬物検査の専門家などは必須であり、より正確な死因究明・個人識別を目指すならば、画像診断の専門家、遺伝子検査の専門家、法歯学者、法人類学者、珪藻学者、昆虫学者など多様な人材が必要です。現行の大学研究室のみに依存した制度では教育・研究の傍らでこれらを全て支えることはできません。

当教室では、岩瀬前教授時代より千葉大学法医学教室、国際医療福祉大学法医学教室と連携をとることにより、人材交流により、この問題を解決しようとしてきました。三大学に在籍する多数の人材の交流により、法医学の多岐にわたる分野の実務・研究・教育を実施しています。また、三大学合同のミーティングで鑑定書をチェックし、バイアスが少ない鑑定を目指しています。このやり方にも限界があり、大学機関だけを増やしても、実務を担う技官さんの雇用を増やすことなどは限界があります。引き続き、法医学研究所などの設立を要望していくとともに、法医学の理想像を忘れることなく、将来を担う人材を育成することが私たちの使命と考えております。

本ホームページが皆様にとって法医学を理解するための一助となれば幸いです。