死因究明

プランクトン検査

16列CT

東京大学法医学教室では、司法解剖および死因・身元調査法に基づく解剖(平成25年度から開始された所謂新法解剖あるいは調査解剖)及び死後CT検査を行っています。

司法解剖とは、犯罪が疑われる死体を裁判所の許可を得て行う解剖です。死因・身元調査法に基づく解剖は、死因究明の必要性があるご遺体に対し、警察署長の権限で行う解剖です。いずれの解剖においても、原則的に画像(死後CT)検査、組織検査、薬毒物スクリーニング検査を全例で行なっています。また事例によっては、薬物定量検査やプランクトン検査、DNA検査、精液検査なども行っています。

ところで、これらの解剖の有無の判断や、解剖の種類の決定は、検視と言われるご遺体の外表検査から判定されることがほとんどですが、我々の教室では死因・身元調査法に基づいて死後CT検査を行い、検視時の判断に役立てる様な業務も行っています。ただし、CT検査のみで死因が完全に究明できることはほとんどありません。

(令和2年度の実績)
令和2年度は、司法解剖は44体、死因・身元調査法に基づく解剖は108体で両者合計、152体の解剖を行いました。死因・身元調査法に基づく死後CT検査は109件実施しました。解剖では、全例について鑑定書あるいは報告書を作成しています。

当教室へ鑑定書等文書送付嘱託・文書提出を検討されている方はこちらをご覧ください。(2021年」7月15日)
鑑定嘱託と文書送付嘱託・文書提出命令について

個人識別

ご遺体の身元を明らかにすること(個人の識別)は社会にとってもご遺族にとっても大切なことであり、死因究明と両輪となる法医学の業務です。古くは、顔貌、着衣、所持品で決めていましたが、それには誤認が多く、現在は指紋、歯科所見、DNA型で、科学的な確認を行うのが主流です。

東京大学法医学教室では、千葉大学、東京医科歯科大学と連携して、歯科所見、DNA型検査を行っています。

臨床法医学

法医学の対象はご遺体だけではありません。暴行などで損傷を受けた場合、その損傷に対して、法医学的な評価を加えることは、被害者の権利を保護するだけでなく、時には被疑者の冤罪を防ぐためにも重要です。近年は特に児童虐待でこの分野は注目されています。当教室では主に、検察等からの依頼に基づき、臨床法医学の実務を行なっています。(被害者様個人からのご依頼は受けかねますのであらかじめご了承ください。)

災害対応

地震など天災をはじめテロや航空機事故など、多数の死傷者が生じる事件が発生した場合、第一は人命の救助ですが、亡くなった方に対しては、死因究明(検案)及び、個人識別の必要があります。この際、法医学の専門的な知識が必要になることが多々あります。当教室として、このような事件が発生した折には検案及び個人識別に対して、最大限の協力をいたす所存です。

東日本大震災の折りには、東京大学法医学教室から、法医学会の派遣要請に基づき、医師が被災地に赴き、ご遺体の検案や身元確認の業務を行いました。連携機関である千葉大学では、平時より災害時の検案訓練を行っており、当教室も参加しています。