ご遺族の皆様へ 〜東京大学法医学教室からのお知らせ〜
突然のご不幸に衷心よりお悔やみ申し上げます。
この度、亡くなられた方とそのご遺族の皆さまに対し、私たちが依頼を受け実施する検査についてお伝えしたいことがあります。必ずご一読いただけますようお願い申し上げます。
当教室では、亡くなられた方やご遺族の人権を守り、あるいは、事故や病気の再発や被害拡大の防止に役立て、社会の安全・国民の健康増進に寄与することを目的として死後の医学的な検査を実施しています。
死後の検査はどのようなことをするのですか?
- その人が亡くなったのかを可能な限り明らかにするために、解剖及び諸検査を実施しています。
- 解剖は手術と同じような手技を用いて行われ、身体の表面及び内側全てを慎重に検査するものです。これは法医学を専門とする医師により、数時間以上をかけて、丁寧に行われます。
- 画像検査、血液・尿などを用いて病気等の詳しい検査を行います。
死後の検査は下記のように行われます
- 解剖を実施する前に、全身のCTを含む画像検査を行います。
- 解剖時には、まず医師により、身体の表面に異常がないかを診ます。そして身体の主要な臓器に異常がないかを調べます。
- 解剖では臓器を直接見ることで情報を得ることができますが、しばしば顕微鏡下で臓器の一部を見たり、特別な検査が必要な場合もあります。
- 通常、死因となった可能性のある細菌やウイルスによる感染症の検査、薬物検査、場合により遺伝子等を調べるためにサンプルを保存する必要があります。
- 検査のために採取されたサンプルは、通常、死因について追加・再検査が必要になる場合に備えて一定期間保存されます。
- これらの解剖・検査のためのサンプル採取が完了すると、検査のために切開した部分を縫合し、葬儀屋さんにお預けする準備を整えます。
なぜ死後の検査が重要なのですか?
死因がわからないとき、解剖を含めた検査を行うことで、家族や地域の人々にかかわる感染症等の健康や安全にかかわる問題を調べること、そして事件の場合には刑事手続に必要な証拠を保存しておくことにつながります。
亡くなられた方とそのご家族や地域の人々の権利、及び健康と安全を守るためにも重要なことなのです。
解剖及び諸検査の目的は、具体的に以下の情報を知ることです。身体の状況により、はっきりと原因を特定できない場合もあります。
- 亡くなった原因や亡くなる直前の身体の様子
- 亡くなった時間の推定
- 直近、または過去に患っていた病気の性質および程度
- 外傷がある場合、外傷の性質および程度
- 他の家族や地域の人々に影響を与える可能性のある感染症や病気の有無
検査の結果はいつわかりますか?
- 解剖後、暫定的な報告は行いますが、最終的な死後検査の報告は、実施された検査の数および種類に応じて、完了までに数カ月以上を要することがあります。
- これらの結果に関するお問合せ先につきましては、鑑定の依頼元である警察等の機関となっておりますことをご了承ください。
研究・教育に関するお願い
当教室では、解剖を含めた各種検査の質を向上させるための研究を行い、同時に学生に対する教育を行っております。そのため、保存させていただいたサンプル等を研究・教育に使わせていただく場合があります。
学会誌などの専門誌上で発表を行う場合もあります。その際は、亡くなられた方やご遺族が特定されるような情報は完全に除き、プライバシーの保護に最大限配慮いたしますし、場合によっては大学の倫理審査委員会の審査を受けます。
これら研究・教育目的の使用に関しましては、ご遺族のご意向が尊重されますので、そうした使用に同意されない場合には、できるだけ早期に、別掲のFaxにて当教室にご一報いただくようお願い申し上げます。それによって不利益が生じることは一切ありません。
東京大学 大学院医学系研究科 法医学教室
Fax:03-5841-3366
参考: The Lullaby Trust「The Lullaby Trust Child Death Review Booklet」〈https://www.lullabytrust.org.uk/wp-content/uploads/lullaby-cdr-booklet.pdf〉On 2017/5/23